五つの階段

越冬かもめ作

 いちわのからすがかーか
 にわのにわとりこけこっこ
 さんはさかながおよいでる
 よんはしらがのおじいさん
 ごはごりらのけつあらい
 ろくはろうやでつかまった

 ある学校では、このなわとびうたがはやっていた。じつは、この
町には、ふしぎな山がある。その山は、なぜか五つのかいだんを
のぼってとうにつくと、かならずつかまってしまうというのだ。
たかしはその話にきょうみしんしんだった。どうしてつかまるのか。
なぜ五つのかいだんなのかなどとなぞが多いのである。たかしの学校
はその山のちょうどよこにある。たかしは小説部の部長なのだ。

 そんなある日、
「よし小説部の名にかけて、あの山をのぼってやる」たかしはいった。
そしてつぎの朝、
「よしいくぞみんな」みんなといっても小説部はたかしだけだし、
もともとそんな部はなかったが、たかしはかってにしんぶんに小説
をかいてはっていた。いよいよたかしのぼうけんがはじまる。
でも、さいごにつかまったらいみがないので、のぼっているとちゅうに
かきながら、さいごに山からおとそうと考えていた。

 まずさいしょのかいだんをのぼっていくと、一羽のからすがあら
われて、ばかにするように「カーカ」とないて、あしから石をなげ
てきた。その石はたかしにちょうどあたってしまった。
『ゴツーン』いたそうなおとがした。たかしはおこって、石をなげかえすと、
みごとてきちゅうした。
『ゴツーン』こんどはからすからきこえた。そのことをメモして、つぎの
かいだんにいった。

 つぎのかいだんは、なぜか二羽のにわとりがゆっくりゆっくり
あるいて、たかしのほうにきた。たかしのはペースにつられて
ゆっくりゆっくりあるいていった。そのとき、とべないはずのにわとりが
ふわっととんで、たかしに頭突きをくらわしてきた。ゆっくりある
いていた目とはちがい、するどい目だった。たかしはあたまにカー
ンときて、にわとりをたたいてやった。にわとりは、目が点になっ
た。たかしはカンカンしながら、メモにかいた。そしてつぎのかい
だんにいそいだ。

 つぎのかいだんは、ふしぎなことにさかながおよいでいた。
たかしはにわとりみたいに目が点になって、ポカーンと口をあけて
いた。すると、さかなが口にフンをした。たかしはまたかんかんに
なり、さかなをつかんで、山のしたにおとしてしまった。ちょっと
わるく思いながら、口にフンをするのがいけないとかんがえて、
メモにかいた。
「思いうかんできたぞ、よしかける」そういって小説をかきはじめ
た。そして、つぎのかいだんにいそいだ。

 つぎのかいだんを半分くらいいくと、おじいさんがふしぜんな
かっこうでたっていた。そのおじいさんは小さなこえでこう言って
いた。
「とうせんぼとうせんぼ、とうせんぼとうせんぼ」ずっとつぶやい
ていたので、たかしは、
「おじいさんどいてください」と言ってみた。すると、おじいさん
は、目つきがかわって、
「とうせんぼとうせんぼ……」と言いつづけた。たかしはきこえな
いのかと思って、
「どいてください」こんどはつよいこえで言った。でも、おじいさ
んはどくことなく、
「とうせんぼとうせんぼ……」と言いつづけた。たかしは、きんき
ゅうのためにパラシュートをもっているのをおもいだして、おじい
さんにしょわせてみるとこう言った。
「おじいさん、このいとをひくとひらくからね。わるいとはおもう
けど、がんばってね」
こんなことを言って、たかしは、おじいさんをつきおとしてしまっ
た。たかしはうえからパラシュートがひらくのを見まもって、メモ
をした。そして、さいごのかいだんへいこうとしたとき、メモをじ
っくりみた。よくみると、あのうたのとおりに、ならんでいる。
『いちわのからすがかーか
 にわのにわとりこけこっこ
 さんはさかながおよいでる
 よんはしらがのおじいさん
 ごはごりらの……』
ということは、つぎのかいだんには、ゴリラがおしりをあらってい
るということだ。と、きづいたたかしは、いっしゅんかたまって、
れいせいに考えた。でも、れいせいに考えても考えてもれいせいに
はなれない。そこでたかしは、いい考えを思いついた。

 そしてさいごのかいだんのまえにくると、たかしはきゅうにはし
った。そう、たかしが考えついたのは、そのまんま下を見てつっき
ろうということだ。そして、ぜんぶつっきったが、なにもなかった。
よかったと思ってメモをした。それとどうじに小説はかんせいした。
さいごのかいだんをのぼりおわると、とうがあった。たかしはちょ
うどおなかがすいていたのだった。『コンコン』「すいませーん」
というと、中からはゴリラがでてきて、
「あっ、またようぎしゃか」といった。たかしはわけがわからな
かったけど、ゴリラははなしをつづけた。
「いやー、こどもがくるとは思わなかったよ。だって、こどもがよ
うぎしゃになるなんて思わなかったもの。もし、四だんめのおじい
さんがパラシュートでたすかったとしても、カラスとにわとりは、
たすかってないんだなー。あと、さかなも。だから、たとえこども
だとしてもたいほする」といって、てじょうをかけられてしまいま
した。たかしは、わけがわからないままろうやにつれていかれまし
た。よーく考えると、たかしは、だいじなことをわすれていました。
じつは、この町は、どうぶつ町というところで、たかしは、人間と
いうどうぶつとして、いるのでした。よくよくかんがえてみれば、
たかしはじぶんがげんじつとうひしていたのかなんなのかわからな
いで、一年間ろうやせいかつをしていました。十年後、たかしは小
説家になって、この山でつくったはなしをみーんなにしました。


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