うらめしやー

「うらめしやー」
「え?」と振り返ったら、俺がいた。
「うらめしやー」
「あんた誰?」
「私はあなたの幽霊ですよ」
「俺の幽霊?俺まだ死んでないんだけど……」
「いずれは死にますでしょう」
「そりゃあまあそうかも知れないが……」
「私は、あなたの幽霊です。未来の国からやって来ました。うらめ
しやー」
「ちょっと待ってよ。あんたが俺の幽霊だったとしたら、俺っても
うすぐ死んじゃうわけ?あんた俺とトシがそんなにかわんないでし
ょ?」
urameshi_sasie
「ご安心を。あなたは長寿を全うされます。人間死んだらみんな
26歳に戻るんです」
「あっそう。長寿を全うねえ。まあ、それを聞いてひと安心だ。で
も、あんた未来からきたってことは、これから先の俺の運命を全部
知ってるってこと?」
「はい、そうです。それについて申し上げたいことがあってやって
まいりました。」
「ねえねえ、俺って誰と結婚するのよ?やっぱり、よし子と身を固
めることになるってわけ?」
「タイムトラベラーの規則で、未来のことは具体的には申し上げら
れないのです。」
「言い渋ったってことは……よし子との結婚はないってことだね。
するってえと誰だい?」
「ですから規則で申し上げられないのですが……まあヒントくらい
ならいいでしょう。エキゾチックな外見の人と規則正しい人とお二
方です。」
「えっ?二人。二回も結婚できるの。外国人と大和撫子が相手かい。
なかなかうれしいなあ」
「まあちょっと違っていますが、くれぐれも気をつけて下さいね。
さようなら」
「さようならって、ちょっと待てよ。あんたなんか言いたくて出て
きたんでしょ?まだ聞きたいこともいろいろあるんだし」
「うらめしやーさようならー」
「おいおい」
と、突然頭上から強い光が降り注いできた。

……UFOに拉致され、彼らの星に連行されて、研究対象にされて
いるうちに彼らの星で革命が勃発、開放されて市民権を与えられ、
妙に目鼻立ちのはっきりした宇宙人やメイド型サイボーグとの結婚
を経て、老化防止対策としてサイボーグ化され、その頃やっと彼ら
の星と地球との交流が始まり、その一助として地球への帰還が許さ
れ、帰省したのもつかの間、宇宙環境への対応の研究材料としてク
ローン化され、その一体がタイムトラベラーとして時間を逆行し、
事件の発端となった今夜に帰ってくるまで、約250年の私的時間
が費やされることになることは、やはり、言いだせなかった。


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